日蓮の教え
日蓮大聖人(楡原・上行寺蔵)
日蓮大聖人は、本化の菩薩たる上行菩薩のご自覚に立たれて、お題目を弘められたのです。この本化の菩薩は、法華経本門の最初、従地涌出品(じゅうじゆじゅっぽん)第十五で、はじめて出現された菩薩であります。この品の名のとおり、上行菩薩は、地から涌き出た沢山の本化の菩薩の最高指導者であります。その意味するところは、私たち庶民(地)の中からあらわれる指導者と言うことであります。この本化上行菩薩に、久遠本仏の釈尊が、悪世末法の時代(仏の時代から遠く離れ、悪と苦しみがみちているけがれた世の中)に、お題目を弘め、人々の救済に邁進するように委嘱されたのです。
大聖人御遺文『観心本尊抄』の中に「釈尊の因行果徳の二法は、妙法蓮華経の五字に具足す。我等この五字を受持すれば、自然にかの因果の功徳を譲り与えたもう」と仰せになっておられます。その意味は、久遠実成の本仏である釈迦が何度も生まれ変わって人々を救おうと導いてきた功徳(恵み)のすべては「妙法蓮華経」の五字にそなわっており、私たちが『法華経』を受持すれば自然にその功徳を拝受することができるというわけであります。この上行菩薩ご自覚に立たれて、自分本位の考え方になっている現実の世界に、お題目を弘め救済されましたのが、日蓮大聖人であります。
私たち、法華宗は、本仏釈尊の使いとして、上行菩薩のご自覚を持たれた「法華経の行者」としての日蓮大聖人を宗祖と仰ぐのであります。
また、私たちは、日蓮大聖人が著した書物をはじめ、手紙などを「御遺文」「御書」「御妙判」と呼んでいます。私たちは、これらを大切にし、法要や、法話などで一節を引用し、折々に信仰を深めています。
大聖人のお言葉は、時代を超えて、今を生きる私たちの心にも力強く響いてきます。
(出典:「信徒入門」法華宗(陣門流)宗務院教化部 昭和59年発行)